第15回 日本音楽療法学会関東支部地方大会にて、大会長でもある高橋多喜子先生の講演を聞いてのレポートと、私が思ったことをや感じたことを書いていきます!
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音楽療法の発展にはエビデンスを集めることが大切である
講演タイトルは「音楽療法の発展に向けて」。今回の学会の大会長である高橋先生の講演です。まず、音楽療法の領域には、大きく分けて4つの分野があるそうです。
- 高齢者
- 障害者
- 統合失調症
- 痛みの緩和
それぞれの分野についてエビデンスを発表されていました。
高齢者の分野では認知症の妨害行動に対して音楽療法の効果が高い
高橋先生のエビデンスでは、高齢者の認知症の分野における、妨害行動に対して効果が高いことがわかったそうです。不安やうつなどの心理的な面においては中程度の効果だったとおっしゃていました。
認知機能に関しては、「予防」として音楽療法を取り入れることはとても良いことで、幸福感も上がったそうです。
ベル演奏での音楽療法は人気が高く、高橋先生もベル演奏での音楽療法のエビデンスをメインにしていました。人気なだけでなく、カラオケなどにくらべて効果があったともおっしゃていました。
ベル演奏は一見簡単そうにみえますが、複数の音を複数人で出さなければならないため、集中力が要求されます。しかし、演奏が出来た時の一体感や嬉しさは、他の音楽療法にはない楽しみをもたらしてくれるようです。
ベル演奏はクリスマスになるとよく聞こえてきますね。プロの方の「1音入魂」のような集中力と研ぎ澄まされた音は、私たちのココロをあたたくしてくれます。
演奏を聞いてるだけでも心地よい気持ちになるのも、何か良い作用を生み出しそうですし、人気の高い秘密なのかもしれませんね。
自閉症スペクトラムの方への音楽療法は、交流や集団生活に変化が!
障害者からの分野では、自閉症スペクトラム障害から話が展開されていきました。
ASの特性とは、臨機応変な対人関係が苦手で、自分の関心、やり方、ペースの維持を最優先させたいという本能的志向が強いことです。特性の目立つ人は、それだけで社会参加に支障をきたします。一方、特性の目立たない人ほど社会参加がうまくいくかというと、必ずしもそうではありません。かえって、そのような人の方が他者と自分の違いに敏感で傷つきやすく、深刻ないじめ被害の対象になることもあります。ASの特性がわずかにでもある人は、変化に弱く、不安をもちやすく、誤解しやすいこと、環境因として慢性的にストレスの多い環境に置かれやすいことから、反応性の精神障害(いわゆる二次障害)のハイリスクといえます。
一般社団法人日本自閉症協会 自閉症スペクトラムの理解と支援より
音楽療法によって、ソーシャルスキル(人との関わりや集団行動を行うための能力)が進み、親子関係の交流が活発になったことがエビデンスとして発表されていました。
音楽心理の視点から、音楽は集団の維持に役立つパワーがあるそうです。おそらく、学校に校歌が必ずあるのも、集団心理からなのかな?と思います。
このことから、リズムを合わせるということと、音楽には「意味の自由度が高い」ということがうまく自閉症スペクトラムの方の特徴と一致したからと考えているそうです。
「障害児の分野は日々研究が進んでいて、以前よりも大きな変更になっているので注意してくださいね」ともおっしゃていました。
よく考えれば、社会生活の中でも音楽を使って一致団結をうながす場面はたくさんあるので、人間の本能的にみんなと合わせたい!
って思わせる何かがあるのかなぁなんて感じました。みんなと合わせられた!って思ったら、「分かってもらえた!」となってリラックス効果も高まりそうです!
特に長期の統合失調症の方に音楽療法は有効的!
統合失調症の方については、全般的な気分の症状、幻覚や妄想に有効だったエビデンスを話されていました。特に変化があったのは長期にわたって統合失調症の方だそうです。
統合失調症は、幻覚や妄想という症状が特徴的な精神疾患です。それに伴って、人々と交流しながら家庭や社会で生活を営む機能が障害を受け(生活の障害)、「感覚・思考・行動が病気のために歪んでいる」ことを自分で振り返って考えることが難しくなりやすい(病識の障害)、という特徴を併せもっています。
厚生労働省 知ることからはじめようみんなのメンタルヘルス総合サイトより
緩和ケアの分野では音楽療法で痛みに差がでる!
緩和ケアの分野はそこまで詳しい話はされていませんでしたが、痛みで差が出るというエビデンスを話されていました。
出産するときに音楽をかける場合もあるようなのですが、これも痛みを和らげる工夫なんでしょうね。ランニングも音楽があるのとないのとでは、ツラさが違います(笑)
レクリエーションとは違う音楽療法が治療として認められるために
「治療」として認められるためには、社会や経済性への理解が必要となってきます。そのためにも、エビデンスを情報として集め、研究し現場に生かしていくことが大切だとおっしゃっていました。音楽療法が治療に効果があるという確率的な情報が増えれば、説明責任を果たすことでき「治療」として認められていく、そしてそれは音楽療法を発展させていくことにつながるとおっしゃってました。
(ひなたさん、ちょっと偉そうw)
今更ですが、エビデンスは「証拠」や「根拠」という意味があります。学術用語として使われる場面が多いです。
音楽療法の分野で証拠や根拠を集めることは、時間はかかるかもしれませんが、今以上に医療の現場で活躍できる未来へと繋げていってくれることでしょう。
高橋多喜子先生とは?
最後に、高橋多喜子先生がどんな方なのかまとめてみました。
プロフィール
福岡県出身。国立音楽大学音楽学部学理学科をご卒業(楽理学科は現在の音楽学学科)。
筑波大学大学院教育研究科障害児教育専攻修了、医学博士(順天堂大学医学部)
淑徳大学教育学部教授、日本老年行動科学会常任理事、日本音楽療法学会理事
主な出版物
HAND BELL 認知症予防の音楽療法 いきいき魅惑のベル
「高齢者のからだ・あたま・こころ」日本老年行動科学会DVD(※商品リンク不明)
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