音楽療法は国家資格となるのか?目指すのは福祉の分野での国家資格。

先月の話題となりますが、音楽療法の国家資格化が本格的に進んでいるとのニュースが入ってきました。そこで今回は音楽療法が国家資格化するとどうなるのか、まとめてみました!

 

国家資格ではない音楽療法には多くの問題点が

音楽療法が国家資格ではないため、多くのデメリットがあります。

1)世間一般的な認知度が低い。
2)音楽療法における世間的な信頼度が薄い。
3)音楽療法という言葉が曖昧に使わがち。
4)音楽療法を受けたくても受けられない。
5)音楽療法士になりたいけど、どうすればよいのかわからない。

ひよっこ音楽療法ライター海月
1〜3の問題は、4〜5があるからこそ起こっている問題のようにも思います…。

音楽療法の民間資格の現状

音楽療法士は現在、民間の資格で取得できます。その中でもっとも信頼性の高いものは(一社)日本音楽療法学会のものでしょう。参考として、日本音楽療法学会の認定資格が取れる学校のリンクを貼り付けておきます。

日本音楽療法学会音楽療法士(補)受験資格認定校一覧

以前米国認定音楽療法士である佐藤由美子さんの講演会へ足を運んだとき、質疑応答時に「音楽療法士になりたいけど、どこで音楽療法の勉強をすればよいのかわからない」という悩みを相談されていました。

音楽療法を学びたい学校はあるが、日本音楽療法学会の認定資格が取れないというような悩みも。(2011年4月から、日本音楽療法学会が定めた学校でしか認定資格が取れないようになっています)

音楽療法士の佐藤由美子さんの講演会へ行ってきました。

音楽療法の資格について調べていると、本当にさまざまなものが出てきます。「それ、音楽療法じゃないから!」って思わず突っ込みたくなるようなものも。もはやガラパゴス。おそらくこの先も個性豊かな音楽療法の資格が誕生していくのでしょう。

その中で音楽療法を学びたい人がどの学校を選択すればよいのか、は民間資格である以上難しい問題なのです。

音楽療法を頼みたいけど頼めない現状

そしてサービスを受ける側も「音楽療法を受けたいけれど、どこで受ければよいのかわからない」という問題があります。

ひよっこ音楽療法ライター海月
実際これは、私も思いました。我が家には毎日のようにソーシャルワーカーだの介護士など(私はもはや把握していないのですが)が父のためにやってきますが、音楽療法のことを聞いても情報が出てきません(笑)

 

ネットで調べていると、いろいろな音楽療法のサービスを見かけますが、中には正直怪しものもちらほら。

もし音楽療法士が国家資格になれば、1つの信頼がおける指針が出来るはず。そんな中、音楽療法が国家資格になるかもしれないというニュースが飛び込んできました。

 

音楽療法士が国家資格になる?

公明党を中心に動き出している「音楽療法を国家資格にしよう」という動き(私、ちょっと乗り遅れた)。

もしこれが実現できたら、日本の音楽療法の発展への大きな第一歩となるはず。もし音楽療法が国家資格になると、どんなメリットがあるのでしょう?

 

国家資格ってどういうもの?

その前に国家資格が一体どういうものなのか調べてみました。

>国家資格とは
国家資格とは、国の法律に基づいて、各種分野における個人の能力、知識が判定され、特定の職業に従事すると証明される資格。法律によって一定の社会的地位が保証されるので、社会からの信頼性は高い。

>国家資格の分類
1 国家資格は、法律で設けられている規制の種類により、次のように分類できる。
A)業務独占資格:弁護士、公認会計士、司法書士のように、有資格者以外が携わることを禁じられている業務を独占的に行うことができる資格。
B)名称独占資格:栄養士、保育士など、有資格者以外はその名称を名乗ることを認められていない資格。
C)設置義務資格:特定の事業を行う際に法律で設置が義務づけられている資格。
D)技能検定:業務知識や技能などを評価するもの。

文部科学省 国家資格の概要について:2018年6月10日現在)

 

国家資格の中でも4つに分類されるのですね。もし国家資格となった場合、音楽療法はおそらく名称独占資格となるでしょう。作業療法士(OT)、理学療法士(PT)、言語聴覚士(ST)もこれに当たります。名称独占資格というのは、

名称独占資格とは、資格がなくてもその業務に従事する事はできるが、資格取得者のみ特定の資格名称(肩書き)を名乗ることができ、資格を所有していない者が法律に定める特定の名称を名乗ることができない資格です。また、名称独占の資格に類似したり、名称独占資格に関連している資格のように紛らわしくした名称を使用することが禁止されています。
資格の王道 名称独占資格:2018年6月10日現在)

というものです。

 

音楽療法の国家資格の必要性とは

日本音楽療法学会、理事藤本禮子(ふじもとひろこ)先生は2012年4月30日発行「第23号日本音楽療法学会ニュース」でこう語っています。

しかし音楽療法を受けたいと思っている人たちが、音楽療法士とその音楽療法を信頼して受けることが出来ることを保証するもの、つまり、音楽療法士と音楽療法の質が一定レベル以上であることを保証するものとしての国家資格が必要なのです。音楽療法士と音楽療法の質が保証されてこそ音楽療法が職業として社会に認められるのです。
2012年4月30日発行「第23号日本音楽療法学会ニュース」より(2018年6月10日現在)

知識は豊富だが医師免許を持っていない医者と、知識は最低レベルだが医師免許を持っている医者のどちらを信じるかというと、後者ですよね。それと同じで音楽療法も国家資格になると、世間の印象は変わってくると思います。

 

実はかなり前から音楽療法国家資格化へ動き出している

実は音楽療法を国家資格にしようという動きはかなり前からあります。日本音楽療法学会は2001年4月1に発足した時から国家資格目指して活動していました。しかしさまざまな問題が起こります。

当時は国家資格推進委員会委員長だった村井靖児さん(現理事長)は2004年10月31日 発行の「第8号日本音楽療法学会ニュース」内でこんなことを言っています。

日本音楽療法学会が誕生してから、学会が事業の上位に位置付け、執行部が全力を挙げて取り組んできた音楽療法士の国家資格化の動きが、一部役員の反対にあい、いま破綻寸前の事態に追い込まれている。学会の意思統一ができていないという理由から、これまで音楽療法推進議員連盟(議連) が当学会と共同歩調で行ってきた交渉から、手を引こうとしているのである。
2004年10月31日 発行の「第8号日本音楽療法学会ニュース」(2018年6月10日現在)

そして2005年04月30日発行の「第9号日本音楽療法学会ニュース」内ではこんな反論が…。

私たちは「国家資格に対する反対派」ではないことを会員の皆様にご理解いただきたいと思います。私たちは、これまで進められてきたような急進的な方法で国家資格化を推進することを危惧し、十分な議論を重ねて国家資格化を推進していくことを提案し続けてきたものです。そしてそのためには、「音楽療法の専門性の確立」と「真の専門職としてのあり方」を学会全体で熟考することが必須と考えています。
2005年04月30日発行の「第9号日本音楽療法学会ニュース」(2018年6月10日現在)

しかしその後は、2010年1月13日には当時の幹事長小沢一郎幹事長と高嶋良充筆頭副幹事長に国家資格化の要望書を提出するなど「国家資格化」に向けて動き出しています。

国家資格化の働きかけについて

 

目指すのは福祉の分野での国家資格化

高齢者ケアの原則

国家資格化についてはある条件が提示されています。それはあくまで福祉の分野での音楽療法士ということです。

医療領域を含んだ資格を我々も会員の皆様方も望んでいますが、 それを前面に押していきますと、現状では国家資格化はまっ たくと言えるほど不可能になります。国家資格化は、10年20年たっても無理でしょう。
2007年10月31日発行「第14号日本音楽療法学会ニュース」(2018年6月10日現在)

という文章があります。ここでは割愛しますが、医療の現場を含む音楽療法となると、承認がかなり難しくなってきます。そのため福祉の分野に特化すれば承認が通りやすくなる、というものです。そして2014年10月31日発行「第28号日本音楽療法学会ニュース」にて

国家資格化を福祉領域において目指すという学会の基本方針が確認されました。
2014年10月31日発行「第28号日本音楽療法学会ニュース」(2018年6月10日現在)

との一文が。音楽療法の国家資格化は福祉の分野を目指しています。

国家資格化に動き出してから18年…

ということで音楽療法の国家資格化への動きは実に18年に渡ります。その間に前音楽療法学会理事長でもある日野原重明先生は亡くなられてしまいました。日の先生は本当に長い間音楽療法の第一線でも活躍されていました。

そろそろ1つの決断が出てもいい時期なのでは無いかと感じています。

 

ひよっこ音楽療法ライター海月
1つの資格を国家資格にするのはこんなに大変なんだなと改めて思いました。今回は日本音楽療法学会の学会ニュースを読み漁り、国家資格化に対する動きをまとめました!

 

 

Hinataプロフィール写真

この記事を書いた人:海月ひなた

ミヅキヒナタと読む。ひよっこ音楽療法ライター。ひよっこなので、実績はまだ何もない。実はこのサイトを作成している人でもある。好きな食べ物は苺大福と納豆。小学校の時の得意教科は音楽ということで、今後に期待。

1件のコメント

  • 2019年3月15日 at 5:57 PM
    Permalink

    緩和ケアや認知症や呼吸器疾患などはできるだけお薬を使わなくても予防の段階から行うとかできると考えます。ただし、緩和ケアにおいては米音楽療法士でもある佐藤由美子先生が病院で立証済みでもあります
    。医療費を抑制するためにも早い段階から予防ができれば病院へ行かなくてもすむわけなのでそう言う意味においては医療の方での国家資格にされてもよいのではないのでしょうか。現に病院で取り組まれている音楽療法士もいるわけで、その人達の所へ議員の方や厚労省の方は是非とも見学していただきたいです。現在医療費はとんでもなく莫大な費用になっております
    。病気の種類によっては音楽療法で予防が可能な部分もあるのでそこをもう少し国や厚労省もご理解いただきたいです。

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