今回は作業療法の現場における音楽の活用について調べてみました。最近では音楽療法士が国家資格である作業療法士の資格にチャレンジしている方も増えているようです。作業療法での音楽の活用は音楽療法と何が違うのでしょうか?
調べてみました!
本日のテーマのもくじ
音楽療法士だけが音楽を活用するわけではない
音楽を使ってからだやこころの機能の回復を目指すのは、実は音楽療法士だけではありません。作業療法の分野でも音楽を利用しています。しかし音楽療法士の音楽の活用方法と作業療法士の音楽の活用方法はどうやら少し異なっているようです。
作業療法とはなにか?
人間は朝起きて顔を洗って歯磨きをし、食事をとって仕事に出かける…など、1日の中でたくさんの作業を行っています。しかし中には病気や障害によって、普通の人には当たり前に出来る作業が出来ない人がいるのです。作業療法士とはそんな人たちに対して医師の指示により体の機能の改善をサポートするのはもちろん、指導や治療も行います。
作業療法での作業は、おもに以下のようなことを言います。
・生きるため、暮らすために必要な身の回りのこと
・働いて生計を立てること
・家庭内の仕事や子育てをすること
・子供が発達していく中で行う遊び
・交通機関や車を使っての移動
・電話やパソコン、スマホなどの利用
一般的な「生活」を取り戻すための手伝いをするのが作業療法士の仕事です。
音楽の特徴はどういったもの?
ここで音楽のもつ特徴について振り返ってみます。
・多くの人が親しみやすい
・手軽に取り入れることができる
・コミュニケーションの代わりになる
・聴くだけでリラックス効果がある
・音楽と動きを一緒に取り入れることで効果が増す
・趣味として活用ができる
音楽が多くの人が親しみやすいという点は、治療においてもっとも重要な特徴です。古代から音楽は魔除けや治療として使われるなど、人間と音楽には密接な関係がありました。そして現代ではその音楽を、もっと有効的に科学的に活用しています。
音楽療法とは違う作業療法における音楽の活用目的とは
作業療法の役割には心の機能回復も含まれています。リハビリは本人が自ら取り組まなければならないものです。体がうまく動かないストレスから、リハビリに対するモチベーションが下がらないよう、環境を整えるのも作業療法士の大きな役割です。
作業療法での音楽の利用目的は、音楽療法と似ています。
・身体療法 → 神経生理学的利用
・精神療法 → イメージ・リラクゼーション
・精神科リハビリテーション → リラクゼーション・回想・レクリエーション
・活動療法 → レクリエーション・ダンスセラピー
・表現療法として → ダンスセラピー・芸術療法
(医療における音楽療法のあり方とその可能性「作業療法と音楽」より引用:2018年6月10日現在)
しかし作業療法における音楽の活用と音楽療法と違う点は、
音楽の利用は、音楽療法における利用と大きく異なるものではないが、システムプログラムという視点から、対象者の病状や回復状態、ニーズに応じて、他の作業と共に使い分けることが、音楽療法における利用とは異なる作業療法の特徴である。(医療における音楽療法のあり方とその可能性「作業療法と音楽」より引用:2018年6月10日現在)
と書かれています。音楽を使ったほうが作業療法において効果的な場合には音楽を取り入れますが、対象者が楽器演奏などの音楽活動が出来る場合には、その人にあったよりよい作業を取り入れます。
あくまで作業療法をメインとし、作業療法のやり方に音楽が有効的であれば取り入れるというかたちです。
作業療法での音楽治療とは
作業療法で音楽を取り入れると、どのような効用があるのでしょうか?音楽療法のように、音楽を取り入れることで生活環境を整えてQOLを維持・向上することはもちろん、さまざまなからだの機能の維持や改善、コミュニケーションなどの社会とのながりを目的として取り入れられることもあります。
そしてもっとも注目されているのが、精神的なリラクゼーションと体の機能回復と相互作用です。音楽で直接体の治療をするのではなく、間接的に取り入れることで、心の健康を取り戻し、それが体の治療にも大きく影響していくことに繋がります。
作業療法で音楽を取り入れることが、他の治療の効果を高める役割も持っているのです。
音楽療法士が作業療法士の資格を取る
音楽療法士は民間資格です。そのため治療のサポートとしての役割は出来ますが、治療の分野には踏み込めません。音楽療法の分野では出来ないことが、作業療法の分野では可能なこともたくさんあります。そのため音楽療法士が作業療法士の資格を取り、作業療法の現場で音楽療法を活用するという方もいるのです。
作業療法士は国家資格であるため、勉強はとても大変だと思いますが、音楽療法を活躍する場が増えることによりやりがいを感じるようです。
作業療法士だけでは、作業療法の分野をすべてカバーできない
このように音楽を適切に取り入れるためには音楽療法の知識が必要となってきています。さらに音楽は言語聴覚療法、理学療法の知識とも掛け合わすことができるため、あらゆる分野を勉強する必要がありますが、一般的に考えてそんなことはムリですよね。
今後はさまざまな分野との連携が非常に重要なものとなってきます。病院や診療所での活躍がメインの作業療法ですが、今後は福祉施設や訪問リハビリ施設での活躍が期待されています。あらゆる分野と連携をして情報を共有しあい、利用者によりよいサービスを提供できるようになることが大切です。
参考文献:医療における音楽療法のあり方とその可能性「作業療法と音楽」 (2018年6月10日現在)