認知症を治す薬はできるのか?音楽や音楽療法、生活習慣病との関係

2017年6月2日に練馬ホールで行われた第146回老年学・老年医学公開講座へ行ってきました。

会場には多くの高齢の方が足を運んでおり、練馬ホールという大きな会場にも関わらず、1階席はほぼ満席状態となりました。今回は「認知症、でも大丈夫」という大きなテーマの中に、下記の3つ題材が組み込まれていました。

1)脳卒中の予防で認知症も予防
2)認知症を治す薬はできるのか?
3)認知症になっても幸せに暮らす

どの講座も認知症についてかなり深い内容まで掘り下げた講義となりました。全てについて書くと長くなってしまいますので、私なりに気になったお話をピックアップしてまとめます。

認知症には種類がある

現在、日本の認知症の患者数は500万人にもなるそうです。そして今後も増えることが予想されます。しかし、一言で認知症と言っても、様々な種類の認知症があります。ここでは認知症の種類について、簡単に説明したいと思います。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、世界中どの国においても認知症全体の過半数を占めています。

注意して頂きたいのが、アルツハイマー病とアルツハイマー型認知症は異なるということです。アルツハイマー病は脳にタンパク質がたまることで引き起こされる病気ですが、最初は症状がありません。

長い年月をかけて脳の変化が進んでいき、物忘れをするようになります。そしてさらに症状が進むとアルツハイマー型認知症となるのです。この認知症の症状がない状態では「アルツハイマー病」とよび、認知症状が出た段階でアルツハイマー型認知症となるのです。

アルツハイマー型認知症の特徴として、少し前のことが思い出せない「近時記憶障害」があります。物忘れはありますが、その場で取り繕う能力はあるため、物取られ妄想や作り話が出て来たりすることもあります。

徐々に進行し、5年前後で寝たきりになってしまいます。しかし、個人差も大きいのが特徴なので、全てのアルツハイマー型認知症の方がこの年数に当てはまる訳ではありません。また、若いほど進行が早い傾向にあります。

血管性認知症

血管性認知症も、認知症患者全体の1割〜3割を占めます。老化や生活習慣病によって、血管の壁がもろくなり、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血が原因で引き起こります。これらの脳の病気が発症した時期に急激に認知症が進むのが特徴です。

脳梗塞や脳出血が起きた場所や大きさで認知症の症状が決まります。脳血管型認知症には多発梗塞型(小血管病変)とビンスワンガー型(白質病変)があります。

脳の病気と一緒に発症するため、認知症の原因となる危険因子は高血圧、糖尿病、不整脈、虚血性疾患、肥満、喫煙、飲酒などです。

混合型認知症

アルツハイマー病と血管性認知症が一体化したのが混合型認知症です。

アルツハイマー病と診断された80歳以上の方のおよそ3割が混合型認知症と呼ばれています。また、アルツハイマー病のおよそ8割が血管障害があると言われており、8割の方が混合型認知症になる可能性があるということになります。

レビー小体型認知症

今年、オノヨーコさんが発症したことでも世間に知れ渡ったレビー小体型認知症。

こちらも認知症患者全体の1割〜3割の方が発症しています。物忘れや幻覚、パーキンソン症状が起こります。このパーキン病の変化が大脳にまで広がってしまうと、認知症となります。

特徴としては、幻視や起立性低血圧、自律神経障害などがあります。

前頭側頭型認知症

前頭葉や側頭葉の萎縮によって起こるのが前頭側頭型認知症です。割合的には比較的少ない認知症ではありますが、特徴としては若い人に多い傾向にあります。65歳以下の人にも見られる病気です。前頭側頭型認知症の特徴として、性格が大きく変わることが挙げられます。そのほか、本能の赴くままに反社会的な行動をとったり、同じ行動を繰り返すの傾向にあります。

記憶力や、日常生活に関しては他の認知症と比べると問題が生じにくいようです。

認知症の種類は主に2つに分けられる

認知症は、大きく分けて2つの種類に分けられるようです。

・アルツハイマー型認知症やレビー小体認知症のようにタンパク質が溜まってしまって発症るす認知症
・血管性認知症のように脳の病気により発症する認知症

この2つの認知症が割合的にも多くなっています。今回の講座では、

・脳卒中を予防することで認知症の予防にもなる(主に血管性認知症について)
・認知症を治す薬はあるのか?(アルツハイマー病について)

の2つの認知症にフォーカスが当てられていました。

生活習慣病の予防が認知症を防ぐ

血管性認知症の原因は、生活習慣病や飲酒、喫煙です。それによって動脈硬化が起こり脳の病気が発症して認知症になるのです。そのため、大元の生活習慣病に有効な薬を飲むことや、運動療法、食事療法を行うことが認知症の予防に繋がります。

ひよっこ音楽療法ライター海月
認知症の予防策と言えば、運動療法や食事療法はよく出てくるキーワードですが、きちんとした根拠があったんですね。

運動療法に関しては毎日10分から15分程度、少し汗ばむ程度の運動を続けるだけでも効果的だそうです。

最近では、動脈硬化がアルツハイマー病の鍵を握っていることがわかってきています。以前は、アルツハイマー病と血管性認知症は治療法が異なると言われていましたが、アルツハイマー病も生活習慣の管理で進行を抑えられることがわかってきています。

海外で結果を出している生活習慣病と認知症の関係

イギリスでは2007年に「心血管病の治療(生活習慣病の治療)が認知症の治療にもなる」ということを国家戦略として取り入れたそうです。血圧管理や禁煙を促進したことによる認知症患者の減少が認められるとという分析結果が出ました。

また、フランスの研究結果からも、神経細胞が歳をとると、ひとりでに死んでしまうと考えれれていたアルツハイマー病が、生活習慣を管理すれば進行を止められたという実験データが出ています。

アルツハイマー型認知症を治す薬はあるのか?

では、認知症に効く薬は現在あるのでしょうか?答えはイエスでもあり、ノーでもあります。あくまで認知症の「症状を改善する薬」であれば現在でも処方されています。これらは「症状改善薬」もしくは「対症的治療薬」と呼ばれます。

認知症の症状が良くなり、病気の進行を遅らせる効果が期待されていますが、認知症の進行を止めるような薬では無いのです。事実、薬を飲んだ時と飲まない時とでは、病気の進行するスピードは変わらなかったそうです。それでも、病気の進行を最大1年程度遅らせることができるので、日常生活を送りやすくするために有効な手助けをしてくれる薬であることは間違いありません。

病気の進行をゆるやかにしたり、とめたりできる薬のことを「疾患修飾薬」と言いますが、現在認知症の治療においては疾患修飾薬は開発段階にあります。(2017年6月現在)

しかし、現在治験の最終段階まで進んでいる「アルツハイマー病疾患修飾薬」が数種類あります。アルツハイマー型認知症の前段階のアルツハイマー病の時点で修飾疾患薬を治療ができるようになれば、認知症の患者数を大幅に減らすことができると期待されています。

5年遅らせることができれば認知症の患者数は半分に

「症状改善薬」では、認知症の患者数を大幅に減らすことは難しいのが現実です。やはり、「疾患修飾薬」の薬の開発に期待されます。なぜなら、認知症が進行するスピードを大幅に抑えることが出来ると考えられているからです。

現在、認知症の患者数の割合は、5歳上がるごとに倍増の傾向にあります。疾患修飾薬を認知症になる前の段階、アルツハイマー病の段階で服用出来るようになれば、認知症の患者数は半分になります。

一気に多くの認知症患者を治療する薬を開発することはとても難しいことです。そこでまずは、病気の進行を遅らせることで患者数を減らす方向で対策が取られているようです。

目指すは認知症の先制医療

アルツハイマー病はとても複雑な病気と言われています。しかし、近年医療機器の発達や研究の積み重ねによって発症のメカニズムは分子レベルで解明されてきているそうです。間も無く疾患修飾薬が開発されるのではないかという段階まで来ていますが、医学が目指しているのは「先制医療」です。

先制医療とは、問題が生じる前の段階で薬を飲んで、病気を「予防」することです。例えば、血液検査の結果でコレステロール値が高い場合は、コレステロール値を下げる薬を処方されます。これは、将来発症するかもしれない「心筋梗塞」や「脳梗塞のリスクを減らすためです。

アルツハイマー病も将来認知症になるリスクが高い人には、先制医療によって予防できる未来がすぐそこまで来ているようです。しかし、そのためにも治療薬の開発の協力が不可欠と言います。

認知症の患者数を減らすために、薬の開発にも興味を持って欲しいとおっしゃってました。

音楽や音楽療法で健康な脳を保つことが大切

認知症の根本的な治療薬が無い中でも、私たちが出来ることは無いのでしょうか?実は、認知症に音楽療法が有効であるというデータが出ています。

東京都健康長寿医療センターにおいて、軽度認知障害やアルツハイマー型認知症の患者さんに、週に1度音楽療法士さんの音楽療法を行ったところ、会話量が増えたり、意欲的になった患者さんが多かったそうです。実際にPET検査にて前頭葉の糖代謝が改善したというデータもあります。

さらに、パーキンソン病の患者さんにおいては、運動機能も改善したとの報告もあります。音楽療法は認知症の脳の活性化や、心の安定という面において、非常に有効的であるということがわかっています。

ひよっこ音楽療法ライター海月
それでもなかな音楽療法や音楽が発展していないのが現状です。もっと色んな世代や環境の人が音楽や音楽療法を楽しめるようになると素敵だなぁと思います。

認知症でも社会とのつながりを持つことは重要

認知症になると、認知機能の低下によって起こる生活の障害は多岐に渡ります。精神的にも肉体的にも大変になり、社会との繋がりがだんだんと持てなくなっていきます。そんな状況で一人暮らしともなると、誰に頼っていいのか、わからないですよね。そして、最後は孤立していってしまいます。

しかし、「その人がクラス地域の中で、その人が必要としている支援を一体的に提供できる」つまり、「地域包括ケアシステム」があれば、前述したようなことは避けられるのではないか?と考えられています。

地域包括ケアシステムとは?

自分が認知症になり、服薬管理やお金の管理に自信がなくなり「自分はこの先生きていけるのだろうか?」と不安になった時に、その役割を計算してくれる人がいれば安心ですよね。このように個人個人の症状や不安な部分に合わせて適切なサービスを教えてくれる人を「支援の調整(コーディネーション)」と呼びます。コーディネーションを探すには、地域包括支援センターに問い合わせるのが良いでしょう。

東京都 福祉保健所 地域包括支援センター及び在宅介護支援センター一覧

リンク:厚生労働省 地域包括ケアシステム

なぜコーディネーションが必要なのか?まず、医者や看護師、心理士から理学療法士などあらゆる専門職の人が地域包括支援センターにいます。しかし、あらゆる分野の専門家が「協力して支援しましょう!」と言ってもまとまりません。しかし、コーディネーションがいることで、色んな専門家の話を聞き、適切な支援を決めることができるのです。

日常生活自立支援事業を活用する

支援を受けたいと思っていても、その支援を行なっていない市区町村もあります。また、そのような支援を行なっていても、受けたいと思っている本人が要介護度が低く、「しっかりしている」と判断されると断られる場合もあります。「買い物や金銭借り、整理整頓をしてほしい」というような支援は「日常生活支援」と言われており、家族が行うケースが多いのです。

しかし、家族がいない一人暮らしの方の場合、「日常生活自立支援事業(地域福祉権利擁護事業)」を利用する事ができます。

リンク:厚生労働省 日常生活自立支援事業

地域包括支援や自立支援事業など、制度は少しづつできてはいますが、まだまだ十分な状況とは言えません。このような支援を必要としている人の割合は多く、対応しきれていないのが現状です。

そこで、それぞれの地域によって、あらゆる取り組みが行われています。

認知症カフェで、交流の場に参加する

認知症の方や家族、認知症が気になる方関心のある方、医療やケアの専門職の方など地域の人々が気軽に集まることの出る場所が認知症カフェです。これは、厚生労働省が抱える、新オレンジプランという戦略の中の一つでもあります。認知症カフェは、要介護認定に関わらず、自由に活動に参加する事ができます。

PDF:認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン) ~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~の概要

しかし、大きな問題点も抱えています。それは運営資金です。認知症カフェの歴史が日本ではまだまだ浅いため、この交流の場がどのような役割を果たすのか、まだ科学的なデータはありません。しかし、この場所が大切な役割を果たしてくれてると感じている方は、決して少なくないそうです。

ひよっこ音楽療法ライター海月
運営資金の問題は大きな問題ですね。少しでも早く、認知症カフェの重要性を国に分かってもらい、補助金などの制度や、何かしらの対策方法があるといいなと感じています。

認知症でも幸せに暮らす権利を

「人として当たり前に生きること」「希望と尊厳をもって生きること」「幸せに暮らすこと」

認知症になるとこのような「当たり前に生きる事」が難しいと考えられてしまいます。たとえ認知症になっても、希望と尊厳をもって「当たり前に生きる事」ができる社会作りをすることが今度の課題のようです。そしてそれを叶えるのは「認知症高齢者に優しい地域」を作る事だとおっしゃっていました。

おまけ

これはかなりびっくりしました(笑)。手話通訳さん、尊敬です。

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